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(2016年8月31日)クリニックで見つかる大腸がんの現状とは

大腸がんは男女とも最も増加率が高いガンの1つで、日本では年間約13万人が罹患し、5万人が死亡すると予測されています(国立がん研究センター報告)。
近年、便潜血検査による大腸がん検診が注目れますが、地域医療の中で見つかる大腸がんは 今なお症状が発現して後に来院する進行がんが多いのです。今回は、クリニックで見つかる大腸がんの現状を分析し、早期発見の 意義を考えてみました。

当院で見つかった大腸がん76例を、1)年齢・性別、2)発生部位、3)検診が契機で発見された割合、
4)症状発現後発見例と検診発見例の間で大腸がん進行度の比較、の4点で検討しました。

1)年齢的には60代がピークですが、30代でも数例発見されたことは注目すべきです。
性別では30~50代は男性が大部分で、女性は60歳以降で急増しました(資料1)          

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2)発生部位は、直腸がんが過半数を占め、盲腸・上行結腸・横行結腸の右側結腸は約20%でした(資料2)
これは当院が肛門外科を標榜するゆえ、他施設に比べ直腸がん比率が高かった可能性があります。

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3)検診が契機で発見される大腸がんの割合は、40歳代では40%を占めたのに対して、60歳以上で十数%と低いことが判明しました(資料3)
職場検診で便潜血検査が普及したことで、就業者の方が検診による発見率が上昇したのではと考えられます。

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4)症状発現後に発見される大腸がんは、大部分が進行がんでした。進行がんは手術を受けても再発することがしばしばです(資料4) 

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これに対し、検診(便潜血検査)が契機で発見された大腸がん(17例)の7割は早期がんでした。
早期がんの多くは内視鏡的切除術で治癒し、たとえ手術になっても再発は少ないのが大きな特色です(資料5) 

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以上、地域医療に携わる現場からの感想として、大腸がんの診療は徐々にレベルアップはしているものの、なお改善の余地が十分にあります。
大腸がんは、便潜血検査や大腸内視鏡検査を受けて早期に発見する(2次予防)ことで、死亡率は1/3に減少すると報告されています1)。
そこで当面のターゲットは、今回の調査結果で検診受診率が低かった60~70歳代のまだまだお元気な高齢者に対する大腸がん検診の受診率を上昇させることです。
最近出た米国からの論文2)でも、65~75歳に最も焦点を当てるべきとコメントされています。

大阪府最南部に位置する泉佐野市・熊取町・田尻町・泉南市・阪南市・岬町の3市3町では、2015年度から行政が行う大腸がん検診は個別検診となり、年1回都合の良いときに、地域の 各医療機関ならどこでも、無料で受けられるようになりました。これにより検診受診率はすでに上昇の傾向にあります。
この方式を今後5~10年間続けてゆくことができれば、大きな成果が得られるのではないかと期待しているところです。

「参考文献」 1)高山哲治、他:大腸癌の予防. 日消病 113;1168-1175、2016.
2)Screening for colorectal cancer-US preventive services task force recommendation
statement-. JAMA 315;2564-2575, 2016.

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