抗加齢医学

人生100年時代へ抗加齢医学の勧め ―百寿者に訊くー

抗加齢医学とは、たとえ病気をもっていてもよい、長く元気で心楽しく人生を過ごせるようにと、年齢に応じて高齢者の健康度を少しでも増進させることを目指す理論的・実践的科学です(図1)。
抗加齢という学問の歴史は世界的にもまだ浅く、地域ではまだ医学的に馴染みが少ない分野ですが、健康長寿の達成のために必ずや大きな貢献ができると信じ、日本抗加齢医学会の専門医として、泉州地域で啓蒙運動を進めてゆきたいと考えています。               

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日本人の平均年齢は、2013年度最新データで男性が79.94歳(世界5位)、女性は86.41歳(世界1位)とさらに延び、男女合わせた平均年齢は83歳で世界一の長寿国です。今後もさらに延びる可能性があります(図2)。

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さて、ヒトは医学的に最長何歳まで生存が可能なのでしょうか(図3)?

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100歳以上のお年寄りはすでに全国で5万人以上おられますが、日本抗加齢医学会の見解では最大120歳まで生きることが可能とされ、健康長寿を前提とした“人生100年時代”が企業の広告にも登場するなど、社会的にも徐々に視界に入りつつあります(図4)。

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自ら後期高齢者である作家 曽野綾子さんは随筆「老いの才覚」の中で、最近のお年寄りは一昔前と比べて依存心が強く判断力に欠けると少し批判を加えながら、高齢者の理想的な生き方として他人に頼らず、目標をもち、家事・掃除など基本的な生活行為は死ぬまで自分で行うなど、孤独になっても自立・自律の“心”を失わないことの重要性を強調しておられます
(図5)。                

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“健康”とは、一般には身体的に病気をしていない状態と捉えられますが、果してそれだけでよいのでしょうか(図6)?

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WHO(世界保健機構)の定義に基づく“健康”とは単に病気がないという消極的な健康ではなくて、心身ともに健康で、かつ社会との関わりを保ち続けられていることを意味します。(図7)。
高齢者が真の健康生活を送り続けられるためには、老化という現象を理論的に捉え、それを制御できる科学が求められるようになり、新しく誕生したのが抗加齢医学(アンチエイジング)です。               

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老化の原因には遺伝的要因と後天的環境要因の2つが挙げられ(図8)、後者が75%を占めます。図8は一卵性双生児の二人、何十年か経って住む環境が異なるとしわの数や歯並びが差異が出ており、環境因子が老化に深く関わっていることを示します。

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ヒトのホルモンの1つに副腎から分泌されるDHEAがあります。このホルモンは10歳代がピークで、以後は加齢とともに減少し、老化と深く関係します。肥満、糖尿病、発がん、動脈硬化、骨粗鬆症、認知症を予防する効果があるとされ、血中濃度が高いヒトほど長生きできることから、抗加齢医学的にはホルモン補充療法の意義が期待されます(図9)。

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健康長寿を研究する上で先ず参考とすべきは、元気に100歳を迎えられた“百寿者”の過去の生活習慣です。日本抗加齢医学会雑誌には、毎回、お元気な百寿者が一人ずつ紹介されています(図10)。

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私はこの記事をまとめ、“百寿者”の生活習慣を食事、嗜好物、運動、趣味、医療の5点から調査しました。食事に関しては動物性脂肪・蛋白を控え、カロリー制限に気を配る方もいますが、多くは肉や魚など何でも好き嫌いなく食べるのが特色です。タバコはすでに止めているものの、アルコールは適度に嗜む方が多数おられます。運動は最低限でも散歩など軽いものは行い、お元気な方々ではさらに自転車に乗り、海外旅行を楽しむ方もおられます。趣味は健康長寿の必須条件です。百寿者は、料理、絵画、俳句、読書、手芸、彫刻、健康麻雀など、日頃熱中できる趣味を必ず1~2つ持っておられます。医療では白内障や骨折の治療、歯の治療は受けたことはあっても、内科的に定期的に通院してくすりの処方を受けているヒトは非常に少ないことがわかりました。近年の薬づけの老人医療に警鐘を鳴らすものです(図11)。

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百寿者”は歳をとっても、自らの生き方に信念をもち続けていることも大きな特徴です。趣味に熱中するヒト、いくつになっても仕事に・家事に・運動に・習い事に取組んでいるヒトなど、常にチャレンジ精神で前向きに生き続けることの重要性をわれわれに教えてくれているような気がします。至適健康(オプティマルヘルス)という考え方があり、そこで意味する元気とはたとえ病気をもっていてもよい、元気の源は人生の目標と生きがい、精神的に前向きで希望をもって暮らしていること、一方長寿とは長く元気で心楽しく暮らすこと、高齢者ほど心の健康が重要なのです(図12)。

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抗加齢医学では、老化度の判定には筋肉、神経、ホルモン、神経、血管の年齢・老化度を評価するしくみが採用されています。今後、各論で詳細に述べてゆく所存です(図13)。

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