お腹の症状から病気を推定する

お腹の症状はさまざまですが、ここでは腹痛、便秘、下痢、むねやけの4つを取り上げます。

Ⅰ. 腹痛

クリニックへ来院する患者様の腹痛は、救急病院へ受診するような場合とは異なり、その程度は軽く、しかも慢性的な訴えが多いのが特徴です。 

1)“胃が痛む、胃のぐあいがわるい”
○ 腹痛で来院する患者様のなかで、最も多い症状です。
○ 胃の痛みでポイントは、痛みは空腹時が主か?、食後が主か?
○ 胃・十二指腸潰瘍では、空腹時に痛み、食事すると和らぐのが特徴です
○ 食後の痛みが主の場合は胆石や膵炎など胃以外の疾患も考慮する必要があります。
○ “食事に関係なく胃が痛む・胃のぐあいがわるい”と訴える方では、胃カメラ検査しても異常が見つからないことが多く、機能性ディスペプシアなどの疾患を考慮する必要があります。

2)“右下腹部が痛む”
○ 一昔前は急性虫垂炎が多かったのですが、今は激減しています。
○ 現在最も多いのは、大腸憩室炎です。
○ 腰痛を伴う場合は検尿を行い、尿管結石など泌尿器疾患の有無を調べることが重要です。
○ 女性では婦人科疾患も考慮せねばなりません。
○ 虫垂炎、憩室炎、婦人科疾患は痛みの部位が少しずつ異なるので、専門医がお腹を注意深く触診すると、鑑別は可能です。

3)“下痢(便秘)を伴う腹痛”
○ 若い人で最も多いのは過敏性腸症候群で、症状の割りに食事は普通に摂取でき、体重も減らないなど全身状態は良好に保たれているのが特徴です。
○ 粘血便がある場合は潰瘍性大腸炎や大腸がんを疑います。貧血を伴うことがしばしばで、大腸内視鏡などによる精査が必須です。

Ⅱ. 便秘

食べたものが消化されて便で排出されるまでの時間は、24~72時間です。このうち胃・小腸を通って大腸に到達するまでは6時間程度ゆえ、大部分は大腸の通過に要する時間です。便秘の機序は、1)大腸の通過時間と2)直腸肛門機能障害の2点から考える必要があります。

1) 大腸の通過時間がおそい
若い女性の便秘はこの範疇に属します。下剤を投与すると、大抵は改善します。

2) 直腸肛門機能障害
高齢者に多いタイプです。大腸内は通常通りに通過してきたにも拘わらず、直腸内に便が貯まって、なかなか排出できない状態(図1)です。放置すると、便は硬い塊になって、摘便を加えないと排出できないことがあります。

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Ⅲ 下痢

下痢の原因は、

1)日頃から便が緩く1日2~3回の軟便~下痢もち
2)日頃から緊張すると急に腹痛(腹部膨満)を伴ってトイレに行きたくなる(過敏性腸症候群)
3)生ものなどを食べた後にはきけ・嘔吐とともに頻回の下痢に襲われる(感染性胃腸炎)
4)風邪をひいて下痢を伴う(感冒性胃腸炎)

が主なものです。

1)と2)は腹部を触診してもとくに異常は認めませんが、問診で大体の診断がつきます。1)では整腸剤のみか、少量のコデイン散を追加するとよく効きます。2)は若年者に多く、腸の運動を高める神経伝達物質(セロトニン)が原因です。治療にはセロトニンの作用を弱めるラモセトリン(イリボー)の服用が有効ですが、効き過ぎると逆に便秘になるので、投与量は慎重に調節しながら経過観察することが重要です。3)では右上腹部にしばしば圧痛を認めます。症状が強く、脱水を伴うことが多いので、点滴が最も効果が期待できます。

Ⅳ むねやけ

日頃、1)むねやけ2)ゲップや苦い水がよく上ったり3)ものを飲み込むとつかえる
などの症状を感じることはありませんか? これが胃食道逆流症(GERD)です。本疾患は欧米に多く、アジアでは10%以下で軽症例が多いとされていましたが、近年は日本でも増加傾向にあります。むねやけは胃液が食道内へ逆流する症状で、加齢に伴い食道胃接合部の緊張低下が主な原因と考えられます。

逆流性食道炎には重症度分類(ロサンゼルス分類(改定版))があります。

1)グレード N: 内視鏡的に変化を認めない
2)グレード M: 色調変化型(minimal change)、
3)グレード A: 長径が5mmを超えない粘膜傷害
4)グレード B: 1か所の粘膜障害が長径5mm以上ある、 
5)グレード C: 1か所の粘膜障害は2条以上の粘膜ヒダに連続して広がる,
6)グレード D: 全周の3/4以上に亘る粘膜障害

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治療は、強力な胃酸分泌抑制剤であるプロトンポンプインヒビター(PPI)がよく効きます。PPIには数種類ありますが、種類によって多少効果に差異があり、当院ではラベプラゾール(商品名パリエット)を好んで使用しています

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