内科

いしもとクリニック 内科診察の基本方針

1.はじめに

病気の原因には1)遺伝要因と2)環境要因の2つがありますが、多くの疾患は後天的な環境要因により発生します。長い人生のなかで曝される食生活、喫煙、飲酒、大気汚染、精神的ストレスなどに由来する酸化ストレスが細胞を老化させて病気を発生すると考えられます。具体的には、高血圧・パーキンソン病(脳神経系)、アトピー(皮膚)、動脈硬化・心筋梗塞(循環器)、胃十二指腸潰瘍・潰瘍性大腸炎(消化器)、白内障(目)、喘息(呼吸器)、がん、糖尿病、膠原病などのほとんどの疾患がこれに関連するのです。以上より、内科疾患の診療では、家族歴、既往歴、喫煙歴、飲酒歴、職業歴などの聴き取りが必須となります。

2.問診票

当院は消化器肛門疾患が主たる診療科目ですが、地域医療の一環として風邪や生活習慣病などの一般内科の診療も行っています。診察の手順をご紹介します。

初めて受診された患者さまには、先ず問診票(図1)を記入して頂きます。この問診票は簡単なものですが、当院ではたいへん重宝しているものです。

「主訴」とは、受診のきっかけとなった症状(例えば、腹痛、のどの痛み、肛門出血など)です。「いつ頃から」は、病気が急性か慢性疾患かの鑑別などで重要です。
「家族歴」「既往歴」は前述の通りで、さらに当院では特にがんの家族歴を重視しています。とくに家系内に若壮年期のがん発生が確認された患者では,慎重に診療を進める必要があります。

服薬中のくすりは、その内容を全部把握しておく必要があります。高齢者で重要なのは抗凝固剤服用の有無のチェックで、当院では問診票のなかには「血をサラサラにする薬を飲んでいますか」の項目が入っています。

妊娠や授乳の有無を確認する項目がありますが、これは若い主婦が肛門疾患で来院したときに、くすりの服用が可能か否かの見極めをするために設けた項目です。

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3.診察

問診が終わると、次は診察です。診察は一般に視診、聴診、触診に分けられますが、この中ではとくに視診と触診を重視します。

視診で最も注目するのは顔色です。貧血が疑われる場合は、採血して貧血の有無を確認します(結果は約1分で判明)。皮膚科疾患はありふれた疾患以外は、専門外です。

聴診は呼吸器感染や喘息の診断、腹部では腸管の蠕動障害の有無に用います。心臓の聴診は専門外です。

触診は、表在性の局所疾患では視診と併せて発赤の有無、形状(丸いか凹凸ありか)、硬さ、可動性の有無などを調べると診断に有用で、かつ治療に直結することもしばしばです。
腹部の触診は注意深く行って圧痛や腫瘤触知などの局在を確認すると、診断を進める上での大きな一歩となります。

4.検査

一通りの診察が終わると、次に必要な検査を実施させて頂くことがあります。検査には血液検査、超音波検査、内視鏡検査、CT検査、MRI検査などありますが、当院にはCT装置・MRI装置はございません。

血液検査は血液迅速測定装置を設置しているので、一般的な血液検査は採血後10~15分で結果を出すことができます。具体的に実施できる検査項目は、貧血の有無(RBC,Hb,Ht)、炎症の有無(WBC,CRP)、栄養状態(総蛋白、アルブミン)、肝機能(GOT,GPT,γ-GTP、総ビリルビン)、血糖値、コレステロール(総コレステロール、HDL-C,LDL-C,中性脂肪)、膵臓(アミラーゼ)、腎臓(BUN,クレアチニン)、電解質(Na,K,Cl)などです。それ以外の項目は外注するので、結果が出るまでには1~5日を要します。

内視鏡検査は胃カメラ・大腸内視鏡のどちらも、患者さんには多少の苦痛と金銭面でも負担にもなるので、検査を行うか否か、行う場合はいつ行うかなどは個々の患者さまと相談してケースバイケースです。但し、検診で精密検査が必要と指摘され、内視鏡検査目的で来院する患者さまには、初診時に検査日を決めて対応します。

超音波検査は当院で施行可能で、肝臓や胆道系のスクリーニングや腹痛の原因精査などに使用します。但し、肥満患者では超音波検査では十分に描出できないことがあるので、CT検査やMRI検査を紹介して受けて頂くことがあります。

5.投薬

一通りの診察と検査が済むと、結果を報告して治療方針を説明します。

その後投薬となり、当院では原則として調剤薬局には頼らず、院内投薬を行っています。

院内投薬では調剤薬局と比べて、個々のくすりの効能や副作用を専門の薬剤師ほど詳細に説明することはできませんが、その代り調剤薬局へ行く手間が省けてお年寄りや発熱のある患者などには負担の軽減が図れます。また、院外投薬に比べて調剤に係る基本料や管理料負担が少なくなり、料金も安く済みます。

投薬の実際で、例えば血圧を下げるくすりなどを初めて処方する場合は、少しのんでもらって効果を確認する必要があるので、通常は7~10日間投与とし、その後もう一度受診して頂きます。効果が確認できれば、その後は1か月投薬で継続してゆくことになります。

投与する薬剤数は、多くとも5~6種類までとします。最近の高齢者はくすりを多く服用する”人が多く、後期高齢者の3割以上は10種類以上を服用するとの報告もあります。一方で、6種類を超えると薬物有害事象や転倒のリスクが急に高まる(資料2)との報告があり、実際に百寿者(100歳になっても健康で自立)は全く服用していないか、服用してもせいぜい1~2種類がほとんどです。医療側も最小限必要な薬剤の投与にとどめ、患者負担はもとより国の医療費抑制にも貢献する姿勢を示すべきです。

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